令和7年 丹波山村の夏を告げる「ささら獅子舞」に見た、伝統と未来の共演

   丹波山村の里に、今年も夏の訪れを告げる音が響き渡りました。約300年の歴史を持つ山梨県無形民俗文化財「祇園祭 ささら獅子舞」が、7月12日と13日に開催されました。

伝統を紡ぐ、舞と音色

ささら獅子舞は、約300年前に現在の青梅市沢井から伝えられたとされる、丹波山村の伝統芸能です。。例年7月中旬、村内の各神社に舞が奉納されますが、今年は連日の猛暑を鑑み、陽を遮る場所が少ない社から先に奉納を行うなど、地域の実情に合わせた柔軟な配慮が見られました。

舞は、2頭の雄獅子と1頭の雌獅子が、4人の着物姿の「ささら」に囲まれて演じられます。この舞は、結界を張られた中で獅子が外に出ようと激しくもがく姿を表現しているとも言われ、その動きは時に悶絶するかのような激しさを伴います。一方、四方に立つささらは、竹製の楽器「ささら」を一定のリズムで擦り合わせ、「ザッザッザッ」という独特の音を響かせます。この音は稲穂が擦れる音に似ているとされ、五穀豊穣を祈る意味も込められていると言われています。

丹波山村の「CSコミュニティスクール」が育む、伝統の担い手

多くのお祭り同様、ささら獅子舞においても、舞手は地域の若者にとって名誉な役割です。しかし、全国的に人口減少が進む中で、伝統文化の担い手不足は深刻な課題となっています。丹波山村も例外ではありませんが、この村には、その課題に立ち向かう取り組みがあります。

丹波山村では、丹波山村文化財保存会が中心となり、地域の大人たちが指導者として活躍する「CS(コミュニティスクール)」活動の一環として、次世代の担い手を育成しています。ここでは、丹波山出身者だけでなく、村に移住してきた方々やそのお子さんたちも積極的に参加し、地域に根ざした文化を学ぶ機会を得ています。普段は村外で仕事をしている人々も、この祭りのために故郷へ帰ってくるなど、伝統への強い想いと絆が感じられます。

移住者が「わが村」の祭りに溶け込む姿

特に、地域おこし協力隊として丹波山村にやってきた若者たちの参加率は非常に高く、今年も新たに2名の協力隊員がささら役として参加し、堂々とした舞を披露しました。また、OBOGの協力隊員たちも獅子舞、笛、交通整理、そして準備・片付けといった様々なお手伝いに加わり、地域と一体となって祭りを盛り上げる重要な役割を担っています。

移住者にとって、地域の歴史と伝統を知り、祭りに参加することは、地域住民とのコミュニケーションを深める絶好の機会となります。祭りの準備や練習を通して、言葉だけではない心の交流が生まれ、「地域の一員」としての強い絆が育まれるのです。

今年は、丹波中学校の生徒が獅子舞として参加し、その若くエネルギッシュな舞が会場を大いに沸かせました。ベテランの舞手とは異なる魅力で観客を魅了し、文化が確実に次世代へと継承されていることを強く感じさせました。「去年まで小学生だったあの子が、今年はもうささら役かぁ~」という地域の声からも、子どもたちの成長と、それを優しく見守るコミュニティの温かさが伝わってきます。

人口500人の小さな村で、子どもから大人まで、そして地域の人々だけでなく移住者も含めて、こうした伝統のお祭りが成り立っていることは、現代社会において実に尊く、感動的な光景に思えます。

丹波山村のささら獅子舞は、屋台や的屋といった一般的な出店はありません。村内各地を巡るため、一か所に留まって見物するような観光イベントとは異なり、まさに「村のお祭り」という雰囲気が魅力です。そこに映し出されるのは、舞を見つめる地域の人々の誇らしげで温かい眼差し。この祭りは、丹波山村の暮らしと人々の心が織りなす、かけがえのない宝物なのです。

私自身、この村に移住して三度目の祭りとなります。最初は都会のお祭りとの違いに驚きましたが、今ではすっかりこれが「わが村」の祭りだと心から思えるようになりました。この舞、そしてそれを支え、見つめる人々の眼差しが、丹波山村の温かいコミュニティそのものだと感じています。